会計・税務

【少額の固定資産購入時に要チェック】#2:一括償却資産

本記事ではわかりやすさ、簡潔さを重視するため、法令等と異なる用語の使用、詳細な規定の内容の記載及び説明を省略している場合があります。
また、本記事の記載に基づく行動の結果、損失を被ったとしても一切の責任を負担することはできません。

この記事で伝えたいこと

法人の方、個人事業主の方が20万円未満の固定資産を取得したときには、税務上のメリットを受けられる「一括償却資産」の制度があります。

この税務上のメリットとは、20万円未満の固定資産を購入した年から3年間で経費にできる、すなわち、通常の減価償却よりも早く経費とすることができる制度です。

最も重要なのは、

20万円未満の固定資産を購入したら、3年間で経費にできる制度がある

ということです。

そもそも固定資産とは?

「20万円未満の固定資産を購入したとき」とはいうものの、そもそも固定資産って何でしょうか。

例えば、工場、機械、車など、長い間使えそうなものをイメージしませんか?
もちろんこれらも固定資産に含まれます。

でも、長い間使えそうなイメージかどうかで、固定資産かどうかが決まるわけではもちろんありません。

購入額が10万円以上かどうか

これが固定資産か否かの基本的な判断基準です。

(※使用可能が1年未満か否かの判断基準もありますが、その判断基準を使うことはそれほどありません。)

固定資産かどうかって大事なの?

「固定資産であるかどうか」、これは税金を計算するにあたって、とても重要です。

なぜなら、通常、固定資産は購入したときにその全額を経費にすることができないからです。

でも、ある程度利益が出ていて、税金を少しでも減らしたい時には、なるべく経費は増やしたいもの。

そんな時には、その年に購入した固定資産を見返してみましょう。

「一括償却資産」の制度を使って、経費を増やし税金を減らすことが出来るものがあるかもしれません。

【補足】固定資産の経費計上について
固定資産は何年も長い期間使うことができるので、使用する期間に渡り、少しずつ経費にします。
(これを「減価償却」といいます。)

「使用する期間」は、資産ごとに定められています。
(これを「耐用年数」といいます。)

例えば、「15万円」の固定資産を購入し、耐用年数が「5年」であれば、以下のような形で経費(減価償却費)にします。

・1年目:経費3万円
・2年目:経費3万円
・3年目:経費3万円
・4年目:経費3万円
・5年目:経費3万円
 合計:15万円

1年目を見てみると、経費は「3万円」です。

一方、「一括償却資産」の制度を適用した場合には、以下のような形で経費(減価償却費)にします。
(※一括償却資産を適用した場合には、耐用年数とは関係なく、「3年」で減価償却を行います。)

・1年目:経費5万円
・2年目:経費5万円
・3年目:経費5万円
 合計:15万円

1年目~3年目の経費の差額は各年で「2万円」ですね。

税率が30%とすれば、1年目~3年目の税金に与える影響は「6,000円」です。
(2万円×税率30%=6,000円)

「一括償却資産」の制度を知っていて、その制度を適用すれば、1年目~3年目の税金を各年6,000円少なくすることができます。
(※「一括償却資産」制度を適用した場合には、4年目以降に経費に計上される金額はありません。)

税金の額、あんまり変わらないですかね(笑)
でも耐用年数がもっと長い資産であれば、償却年数を3年に短縮できれば影響はもう少し出ます^^;

一括償却資産の制度の良いところ

「一括償却資産」の制度の良いところは、主に以下の通りです。

①償却資産税の対象にならない

この制度を適用した資産は、「償却資産税」の対象にならないというメリットがあります。

すなわち、法人税や所得税とは全く別の「償却資産税」という税金が余分にかからないということです。

②適用する事業者に制限が無い

法人・個人事業主に関わらず、どの事業者の方でも「一括償却資産」の制度を適用することが可能です。
(※「少額減価償却資産」の制度では、対象事業者が中小企業者等に限定されています。)

③年間の上限金額が無い

上限金額は無いので、20万円未満の固定資産をたくさん購入しても、全ての資産に「一括償却資産」の制度を適用することが可能です。
(※「少額減価償却資産」の制度では、年間300万円が上限となっています。)

「一括償却資産」の制度の注意点

「一括償却資産」の制度にも、注意点があります。
主な注意点は以下の通りです。

①複数年で考えれば納税額が減るわけではない

通常の固定資産は減価償却費として複数年に渡って経費とすべきところ、「一括減価償却資産」の制度を適用すれば、20万円未満の少額な固定資産は、購入した年から3年間で経費にすることが可能となります。

ただし、この制度を適用して購入した年から3年間で経費にした場合でも、通常の固定資産として減価償却費によってより長い年数で少しずつ経費にした場合でも、複数年を通算すれば、経費となる金額は同じです。

例えば、
・購入金額15万円
・耐用年数5年

上記のような固定資産を購入した場合、購入した年から3年間で毎年5万円ずつ経費にしても、毎年3万円ずつ5年間に渡り経費にしても、どちらも経費となる金額は15万円なので、最終的に経費となる金額は同じです。

そのため、税金に与える影響も複数年で考えれば同じです。

(※厳密にいえば、その5年間の中で税率が変われば、税金に与える影響は変化します。)

②購入した年に全額を経費にできるわけではない

「一括償却資産」の制度では、20万円未満の固定資産を購入した年に全部を経費にできるわけではありません。
あくまで3年間で均等額ずつ経費にできる制度となります。

※「少額減価償却資産」の制度では、30万円未満の固定資産を購入したら、その年に全額を経費にすることができます。

③20万円未満かどうかの判定は、経理方法による

「20万円未満かどうか」に判定が必要なのか、と思われるかもしれません。

購入金額が20万円未満かどうか、ただそれだけのことでは??と思いますよね。
その通りです、ただそれだけのことです。

でも、それが意外と難しいです。

主に以下の2つの場合に、20万円未満かどうかの判定に迷うことになるかと思います。

税込金額か、税抜金額か

20万円未満かどうかの判定は、「消費税込みの金額」、「消費税抜きの金額」、どちらで判断するのでしょうか。

例えば、
税抜190,000円、税込209,000円の固定資産を購入したとします。

・税抜190,000円で判定なら:20万円未満 ⇒ 適用可能
・税込209,000円で判定なら:20万円を超える ⇒ 適用不可

という判定となります。

税抜・税込の判定方法としては、その事業者が採用している消費税の経理方法に合わせて判定することになります。

・税抜経理を採用していたら

税抜経理を採用しているなら、上記例では税抜金額190,000円に基づいて、20万円未満かどうかの判定をします。

・税込経理を採用していたら

税込経理を採用しているなら、上記例では税抜金額209,000円に基づいて、20万円未満かどうかの判定をします。

ということは、上記例の場合には、税込経理では「一括償却資産」の制度を適用できないことになります。

このように、場合によっては同じモノを購入しているのに、どちらの経理方法を採用しているかによって、「一括償却資産」の制度の適用可否が変わってしまいますので、要注意です。
(この場合は税抜経理を採用している方が、お得ですね。)

セットで購入した場合

購入額が20万円未満かどうかで判定は、「通常1単位として取引される1単位ごとの金額」で判定すると表現されています。

簡単にいえば、1個当たり20万円未満ならOKということです。

ただし、ここにも注意点があります。

例えば、応接セットのような場合です。

応接セットは複数のイスやテーブルがセットで売られているため、20万円未満かどうかの判定は、個々のイス等で行うべきか、応接セット全体で行うのか、悩ましいところです。

この結論としては、「応接セット全体の金額」で判定を行うことになります。

なぜなら、応接セットは、セットとなっているイス等が全体で応接セットとしての機能を発揮するので、応接セットが「通常取引される1単位」は、応接セット1つだからです。

応接セットの場合だけの例外ではありません。
セットで販売されるようなものは、このように判定を行うことになります。

以上のような例外もありますが、基本的には1個当たりの金額で判断すればOKです。

少額減価償却資産と一括償却資産の比較

【制度の内容】
・少額減価償却資産の制度
30万円未満の固定資産を、購入した年(使い始めた年)に全額を経費にできる

・一括償却資産の制度
20万円未満の固定資産を、購入した年(使い始めた年)から3年間で経費にできる

【金額基準】
・少額減価償却資産の制度
30万円未満かどうか

・一括償却資産の制度
20万円未満かどうか

【対象事業者】
・少額減価償却資産の制度
中小企業者等に限定

・一括償却資産の制度
全ての事業者

【年間の適用上限額】
・少額減価償却資産の制度
年間300万円までが上限

・一括償却資産の制度
上限無し

【償却資産税の対象になるか】
・少額減価償却資産の制度
適用資産は償却資産税の対象になる

・一括償却資産の制度
適用資産は償却資産税の対象にならない

最後に

20万円未満の固定資産を購入したら、3年間で経費にできる制度がある

これだけのシンプルな制度ですが、実際に細かく見ていくと、実は奥が深いです。

実際の税務でもよく利用する制度です。

中小企業経営者の方や、個人事業主の方は、覚えておいて損は無いかと思います。
(特にご自身で申告をされている方)

似たような制度として30万円未満の固定資産を購入した時に適用可能な「少額償却資産」の制度もあります。
「少額償却資産」の制度については、下記記事をご覧ください。

【少額の固定資産購入時に要チェック】#1:少額減価償却資産

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